更年期治療について

ほてり、イライラなどの更年期症状(エストロゲン欠乏症状)に対し、治療を行うことが可能です。
更年期症状により日常生活が困難な場合は経口エストロゲン薬や、経皮エストロゲンジェルによるホルモン補充療法を選択する場合があります。
他に漢方薬や大豆イソフラボンのサプリメント(エクエル)なども用意しています。医師にご相談ください。
ホルモン補充療法について
閉経前後の5年間にほてり・つかれ・抑うつ・肩こり(筋肉痛)・外陰部の不快感・尿もれ、などの症状が現れ、日常生活に影響を与えるようになったものを「更年期障害」と呼びます。
これらの症状は40〜60歳女性の50〜80%が感じているとされていますが、今まではなかなか治療の対象とされませんでした。しかし最近は女性の活発な社会進出に伴い、「仕事やプライベートをより良いものにしよう!」と婦人科に来られる方も増えてきました。
「更年期症状」の治療には「ホルモン補充療法」「漢方薬」「精神科による治療」「心理療法」などがあります。
このページでは「ホルモン補充療法」について説明します。
「ホルモン補充療法」とは女性ホルモンであるエストロゲンを投与する治療です。子宮を持っている方は、子宮体癌のリスクを減らすためプロゲスチンのホルモン投与も必要となります。
2002年ごろ、Women's Health Initiative (WHI) Hormone Programという「ホルモン補充療法」の大規模な研究が米国で行われました。しかしその研究の結果は散々たるものでした。なぜなら「ホルモン補充療法」を受けた女性に心筋梗塞が増えたという結果が出て、この研究は一旦中止になってしまったのです。そのため、その後数年間「ホルモン補充療法」はあまり行われなくなりました。
ところが数年後この研究を詳しく解析した結果、全く別の結果が出てきました。2013年に行われた解析により「心筋梗塞などのリスクは上昇しない」という結果が出ました。そして2017年には「むしろ心筋梗塞のリスクは減る可能性がある(ただし閉経後10年以内に治療を開始した人に限る)」という報告も出ました。
エストロゲンを内服から経皮(皮膚に貼る・塗る方法)に変更するなど、さまざまな見直しが行われた結果、適切な方法でホルモン補充療法を行うと「更年期障害」が良くなるだけでなく「心筋梗塞」「大腸がん」「骨粗相症」「認知症」「高脂血症状」のリスクを減少し、また筋力やコラーゲンの低下を防いだりするアンチエイジングの効果も認められる様になったのです。
懸念事項の一つであった乳がん増加のリスクについても、「肥満」や「アルコール」、「座ってばかりのライフスタイル」などといった一般的な要因によるリスク上昇と同様程度といわれています。(ホルモン補充療法による相対リスクは1.2程度)。しかし乳がんはもともと日本人女性の9人に1人が罹患すると言われているがんなので、定期検査は必要です。
更年期障害に非常に効果の高い治療の一つである「ホルモン補充療法」ですが、一つ注意点があります。それは閉経してから少なくとも10年以内に開始しないといけないということです。そのため40〜60代の女性は、この治療について事前に知識を持っておく必要があります。